営業担当の「口頭説明」をWebに移すだけで、売上の構造は変わります。
本記事でいう「営業トークのWeb化」とは、営業担当が商談で毎回説明している判断材料を、顧客が事前に理解できる形でホームページに構造化することを指します。また、本記事における「問い合わせの質が高い」とは、予算感・導入条件・比較軸をある程度理解したうえで連絡が来る状態を意味します。
営業トークをWebに掲載するとホームページが「セルフフィルター」として機能し、条件が合わない問い合わせが減るため、結果として商談の質が向上するのです。
目次
営業マンが疲弊する本当の原因
中小企業の現場で、こんな光景が繰り返されています。
新規のお客様が来ると、営業担当が一から会社の説明を始めます。サービスの特徴、価格の根拠、他社との違い、導入後のサポート体制。どれも「いつも聞かれること」ですが、毎回ゼロから説明しています。
日経リサーチの調査によれば、BtoBの購買関与者が情報収集する際、最も多く使われているチャネルは「その会社のホームページ」であり、全体の40%を占めています。これは展示会や営業担当者からの説明を上回る数字であり、顧客はまずホームページで判断しようとしていることがわかります。

引用元:株式会社日経リサーチ「購買プロセス調査|BtoB企業の情報取集「HP」の重要性が高まる」
にもかかわらず、知りたい情報がホームページに載っていなければ、営業が補完するしかありません。問題は「営業が頑張っていない」ことではなく、営業が毎回説明しなければならない情報が、Webに載っていないことなのです。
「ホームページは広報用」という思い込みが機会損失を生む
多くの経営者がホームページを「会社案内のデジタル版」と捉えています。綺麗な写真、沿革、事業内容の一覧。確かにそれらも必要ですが、顧客が本当に知りたいのは「自分の課題を解決できるかどうか」の判断材料です。
wib社が2024年に実施した調査では、BtoBの購買プロセスにおいて8割を超える決裁者が、営業担当と接触する前に購買判断に関わる情報に触れていることが示されています。つまり、商談が始まる前に勝負は決まっている可能性が高いということです。

引用元:株式会社wib「【独自調査レポート】BtoBの購買プロセスにおいて、84%の決裁者が営業担当との接触前に購買を決定づける情報にリーチ」
この傾向は加速しています。才流がまとめた調査によれば、BtoBの顧客は購買プロセスの57%を営業担当者に会う前に完了させています。顧客は自らネットで調べ、課題の解決策を見つけ、ベンダーの選定まで行う。営業に声がかかる頃には、すでに候補が絞られているのです。
ホームページを「会社案内」止まりにしておくことは、この57%の意思決定プロセスから自社を除外することに等しいと言えます。
営業の「強み」をWebに移す具体的な方法
では、何をホームページに載せればいいのでしょうか。答えはシンプルです。営業が現場で毎回説明していることを、そのままWebコンテンツにするのです。
優秀な営業担当者が顧客の信頼を獲得するプロセスを分解すると、いくつかの要素に整理できます。
- 顧客の不安を先回りして解消している
- 価格の根拠を明示している
- 失敗した場合のリカバリー方法を説明している
これらは特別なコンテンツではありません。日々の商談で自然に語られている「商売の道理」ばかりです。
Webに載せるべき営業トーク項目の例
具体的には、以下の優先順位で情報をWebコンテンツ化することをお勧めします。まずは「対象外」を弾き、次に「判断」を促し、最後に「安心」を与える構成です。
- 向いているケース/向いていないケース
自社サービスが効果を発揮する条件、逆に合わない場合の正直な説明
- 価格の考え方・決まり方
見積もりの構成要素、価格帯の目安、なぜその価格になるのかの根拠
- 導入までの具体的な流れ
問い合わせから契約、納品までのステップと所要期間
- よくある失敗とその回避策
過去の事例から学んだ注意点、事前に確認すべきポイント
- 導入後のサポート内容
アフターフォローの範囲、問い合わせ対応の体制、保証の有無
- 他社との違い
機能比較ではなく、顧客にとってのメリットとして翻訳した差別化ポイント
- お客様からよく聞かれる質問
営業現場で繰り返し答えている疑問とその回答
これらは多くの企業で隠したがる情報でもあります。しかし、隠せば隠すほど、顧客は比較検討の段階で不安を感じ、問い合わせに至りません。逆に、競合が出していない情報をWebで先に出せば、それだけで選ばれる確率は上がります。
営業担当者の説明資産は、最強のWebコンテンツになり得ます。SEOの観点からも、顧客が実際に知りたい情報はそのまま検索需要と一致するためです。
事例に見る「営業知見のWeb化」の成果
実際に、営業現場の知見をWebに移して成果を出している企業があります。
大分県でバイオトイレを製造・販売する株式会社ミカサは、Webサイトを「24時間働く営業マン」として活用しています。代表の三笠氏によれば、「Webのおかげで、新規開拓専門の営業マンを置かずに済んでいる」とのことです。ニッチな製品であるバイオトイレですが、顧客の疑問に先回りして答えるコンテンツを充実させた結果、問い合わせの「質」が劇的に向上しました。製品の価格帯を理解していない問い合わせは減り、本当に製品を必要としている顧客からの連絡が増えています。
同じく大分県の住宅リフォーム会社株式会社カワノは、「耐震」という専門領域に絞ったWebサイトにリニューアルしました。結果、受注は明らかに増え、1件あたりの受注単価も向上しています。社長は「お客様がWebサイトを見てきているのがわかります。発信している用語がサラッと相手の口から出てくるんです」と語っています。
両社に共通するのは、「営業担当者が現場で説明していたこと」をWebコンテンツとして公開し、それを長く続く仕組みとして運用している点です。
Web化がもたらす「営業生産性」の変化
実際に営業トークをWeb化した場合、商談の現場はどのように変化するのでしょうか。以下は、大分県の中小企業をモデルに、実際の支援事例と各種調査データをもとにしたシミュレーション比較です。
| 比較項目 | ① 初対面でゼロから説明(従来型) | ② Webで事前説明済み(連動型) | 変化の理由 |
|---|---|---|---|
| 初回面談の時間 | 90分〜120分 | 45分〜60分 | 会社紹介や基礎説明が不要なため。 |
| 成約までの面談数 | 4回〜5回 | 2回〜3回 | 顧客の約57%の意思決定が事前に完了しているため。 |
| 商談の成約率 | 15%〜20% | 40%〜60% | 条件が合わない層がWeb上で自ら離脱するため。 |
| 営業1人あたりの生産性 | 100%(基準) | 150%〜180% | 面談時間が短縮され、有効商談数が増えるため。 |
※成約率や生産性の改善幅は、価格帯・向いていないケース・導入条件をどこまで事前に明示できているかによって大きく変わります。
多くの経営者は「会って話さないと熱意が伝わらない」と考えがちです。しかし顧客の立場に立つと、判断材料がないまま時間を取られること自体が負担になっているケースは少なくありません。
Webであらかじめ情報を開示することは、営業を省略する行為ではありません。それは、顧客が自分のペースで理解し、納得したうえで次のステップに進めるようにするための配慮です。
営業トークのWeb化とは、単なる効率化ではなく、顧客の意思決定スピードを最大化するための、極めて実務的なホスピタリティなのです。
この方法にデメリットはないのか
営業知見をWebに公開することに、抵抗を感じる経営者もいらっしゃいます。「競合に手の内を見せることになるのではないか」「価格を出すと値引き交渉の材料にされるのではないか」。
私たちも多くの企業様と向き合う中で、その不安をよく耳にします。ただ、考えてみてください。御社の強みが「情報を隠していること」だけなら、その優位性はいずれ崩れます。むしろ、競合が出していない情報を率先して公開することで、業界内での信頼を先に獲得できます。
現実的なリスクとして、コンテンツ制作には工数がかかります。営業担当者の話を文章化し、写真を撮り、定期的に更新する。この作業を続けるには、社内の体制づくりが必要になります。
それでも、この投資は営業担当者を1人雇うよりはるかに低コストです。24時間365日、全国どこからのアクセスにも対応できるWebサイトは、最も費用対効果の高い「営業拠点」になります。
経営者・現場の負担を減らす運用への転換
Webサイトを「営業インフラ」として機能させると、社内の分業構造も変わります。
営業担当者はクロージングに集中できるようになります。顧客がWebで情報を得て、ある程度の判断を終えた状態で問い合わせてくるためです。ゼロから説明する時間は減り、商談の質が上がります。新人教育のコストも下がります。Webサイトに蓄積されたコンテンツは、そのまま社内のマニュアルにもなります。先輩営業担当者が口頭で伝えていたノウハウが、テキストとして残るからです。
ただし、更新をブログを書くと捉えると続きません。正しい認識は現場の気づきを記録することです。お客様からよくある質問、現場で聞いた声、施工事例の写真。これらを定期的に追加するだけで、サイトは着実に育っていきます。
まとめ:明日から始める3ステップ
まずは営業担当者3人に「初回商談で必ず説明していること」を10分で書き出してもらってください。その中で3人が共通して説明している項目が、最初にWebへ載せるべきコンテンツです。
次に、現在のホームページを「お客様の判断材料」として見直してください。競合と比較されたときに、自社の強みが伝わる構成になっているでしょうか。問い合わせをためらわせる「情報の欠落」はないでしょうか。
最後に、更新の仕組みをつくってください。月に1回で構いません。お客様の声、現場の写真、よくある質問への回答。小さな更新を続けることで、Webサイトは資産として育ちます。
ホームページを放置すれば、営業担当者の負担は減りません。 競合が先にWebを整備する前に、まずは初回商談で必ず説明している内容がWeb上に揃っているか、確認することから始めてみませんか。
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よくある質問と回答
営業の説明内容をWebに載せると、競合に真似されませんか
真似される可能性はあります。しかし、御社の実績、顧客の声、現場の写真までは真似できません。情報を出さないことで失う検討候補に入る機会のほうが、長期的にはリスクが大きいです。先に出したほうがオリジナルとして認識されるという効果もあります。
価格をWebに載せると値引き交渉されやすくなりませんか
逆です。価格の根拠や内訳を事前に示すことで、値引きありきの交渉は減る傾向にあります。問い合わせの時点で予算感が合わない顧客がフィルタリングされ、営業効率も上がります。
小さな会社でも効果がありますか
中小企業だからこそ効果があります。大企業のように営業部隊を持てない分、Webが営業を代替する必要があるためです。地域や業界で「この分野ならこの会社」というポジションを確立できれば、規模の不利を補えます。
どのくらいの頻度で更新すればいいですか
最低でも月に1回、何かしらの更新をすることをお勧めします。お客様の声の追加、新しい事例の紹介、よくある質問への回答など、大きな記事でなくて構いません。検索エンジンもユーザーも動いているサイトを信頼します。
参照・出典一覧
本記事の作成にあたり、以下の情報を参照しました。
- 購買プロセス調査:BtoB企業の情報収集「HP」の重要性が高まる 発行元:日経リサーチ|確認日:2026-02-03
- BtoBの購買プロセスにおいて、8割を超える決裁者が営業担当との接触前に購買判断に関わる情報に触れている 発行元:株式会社wib|確認日:2026-02-03
- BtoBサイトの役割と重要な理由 発行元:株式会社才流|確認日:2026-02-03
この記事を書いた人
嶺 利久
Webコンサルタント(グロースパートナー)
Webマーケティング歴15年。中小企業を中心に300社以上のWebサイト制作・マーケティング支援に従事している。「ローカル企業をGROWTHする」をモットーに、地域企業のSEOやコンテンツマーケティング戦略を得意としている。Webを起点とした戦略支援とブランディングを通じ、顧客のビジネス成長に貢献している。



