
銀行員は、デザインの良し悪しではなく「整合性」と「更新性」だけを見ています。
融資審査や法人口座開設の申込書を受け取った銀行員が、最初にやることをご存じでしょうか。
まず、御社の社名を検索します。
デザインがきれいかどうかは1ミリも見ていません。彼らが確認しているのは、登記簿謄本に書かれた住所と、ホームページに書かれた住所が一致しているか。申込書に記載された電話番号と、ホームページに掲載された電話番号が合っているか。事業内容が、定款に記載されたものと矛盾していないか。
たったそれだけです。しかし、この「たったそれだけ」が、多くの中小企業のホームページでは満たされていません。
犯罪収益移転防止法に基づき、金融機関は法人口座開設時に「本人特定事項」「取引目的」「事業内容」「実質的支配者」を確認する義務を負っています。この確認作業において、ホームページは「第三者が見ても現在の事業活動状況が把握できる資料」として位置づけられています。
ホームページを「集客ツール」としてしか捉えていない経営者は少なくありません。しかし、金融機関との取引においては、ホームページは「信用を証明する書類」として機能します。決算書が数字で会社を語るように、ホームページは言葉と画像で会社の実在を語ります。
目次
銀行員が見ているのは「デザイン」ではなく「整合性」
審査担当者の仕事は、御社が「実在する会社」であり、「申告どおりの事業を行っている」ことを確認することです。
「3点照合」という基本動作
銀行員は、審査時に最低でも3つの情報源を突き合わせます。登記簿謄本、申込書類、そしてホームページです。
GMOあおぞらネット銀行の法人口座開設案内では、「第三者が見ても現在の事業活動状況が把握できるような、可能な限り客観性のある書類」として、顧客からのコメントが確認できるホームページを審査資料の一つに挙げています。
住所が登記簿と1文字でも違えば、それだけで「なぜ違うのか」という疑問が生まれます。代表者名が旧字体と新字体で異なるだけでも、確認の電話が入ることがあります。
これは、マネーロンダリングや口座の不正利用を防ぐためです。架空会社による口座開設を防ぐために、金融機関は「登記情報」「申込情報」「公開情報」の整合性を必ず確認します。
住所と電話番号が語る「逃げない覚悟」
ホームページに固定電話番号が掲載されているか、携帯電話番号だけなのか。これは銀行員にとって、見逃せない情報の一つです。
固定電話番号は、その番地に通信回線が引かれていることを意味します。つまり、物理的な拠点が存在し、そこで事業活動が行われている可能性が高いという間接的な証拠になります。
携帯電話だけでは、事業所の存在が確認できません。もちろん、携帯電話だけで事業を行っている会社も数多く存在しますが、審査上は「追加の確認が必要な状態」と判断されます。
freeeの法人口座開設ガイドによれば、「特にホームページが用意されていない場合は審査に通りにくい」とされており、ホームページの有無自体が審査の判断材料の一つになっています。
公式サイトの有無
公式サイトがない場合、不信感を持たれてしまい審査に落ちる場合があります。ITサービスなど一部の業種によっては、公式サイトがないことに違和感を持たれるかもしれません。
公式サイトを運営し内容を充実させれば、会社の実態や会社の健全性をアピールできます。
現在は個人でも簡単に作成可能なので、コーポレートサイトを持っていると審査で有利にはたらく場合があります。
引用元:freee「会社設立の基礎知識|法人口座開設の方法まとめ!必要書類や金融機関の選び方を解説」より
「.co.jp」ドメインが持つ意味
ドメインの種類も、銀行員が確認するポイントの一つです。
「.co.jp」ドメインは、日本国内に登記された法人しか取得できません。しかも1法人につき1ドメインのみという制限があります。つまり、「.co.jp」を使用している時点で、その会社が日本国内で法人登記されていることの間接的な証明になります。
「.com」や「.jp」が悪いわけではありません。ただし、法人の実在性を示す材料としては、「.co.jp」に一歩譲ります。
ドメインの取得費用は年間数千円程度です。この投資で「法人としての信頼性」を示せるなら、費用対効果は高いといえます。
決算書の数字を裏付ける「第2の財務資料」としてのWeb
融資審査において、決算書は最も重要な資料です。しかし、数字だけでは見えないものがあります。
ビジネスモデルは「誰にでもわかる言葉」で書かれているか
銀行員は、あらゆる業種の会社と取引します。御社の業界に詳しいとは限りません。
ホームページに書かれた事業内容が専門用語だらけで、何をやっている会社なのか分からない。これは審査上、マイナスに働きます。「何をやっているか分からない」という状態は、「事業実態が不明」という判断につながりかねないからです。
「どんな顧客に」「どんな商品・サービスを」「どのように提供しているか」。この3点が、業界外の人間にも理解できる言葉で説明されているか。審査担当者は、この観点でホームページを読んでいます。
写真の有無が資産評価を左右する
製造業であれば工場の写真、建設業であれば施工現場の写真、運送業であれば車両の写真。これらは、決算書に計上された資産が「実在する」ことの証拠になります。
決算書に「機械装置1,000万円」と書かれていても、それが本当に存在するかどうかは書類だけでは分かりません。ホームページに掲載された工場写真、設備写真があれば、「この会社には確かにこれらの資産がある」という心証につながります。
写真がないからといって審査に落ちるわけではありません。しかし、写真があれば「追加で確認する必要がない」という状態を作れます。審査担当者の仕事を減らすことは、審査のスピードを上げることにもつながります。
銀行員が「追加確認が必要」と判断する瞬間
ここまでのポイントを整理すると、銀行員がホームページで行っているのは「粗探し」ではありません。追加確認が必要かどうかのふるい分けです。
具体的には、次のような瞬間に「要確認」と判断されます。
- 会社情報が登記内容と少しでも食い違っている
- 事業内容が抽象的で実態が見えない
- 設備や業務風景の写真がなく、資産の裏付けが取れない
- 更新が止まっており、現在も事業が動いているか不明
これらはすべて、「融資不可」ではなく「追加調査対象」になるサインです。そしてこの追加確認こそが、審査遅延や印象悪化の正体なのです。
取引先の掲載が持つ「第三者認証」の効果
「主要取引先」としてある程度知名度のある企業名が掲載されていれば、それ自体が信用の証明になります。
名の通った企業と取引があるということは、その企業の与信審査を通過したということです。銀行員にとっては、「他社が既に審査済み」という情報は、自社の判断を裏付ける材料になります。
もちろん、取引先の掲載には相手方の許可が必要な場合もあります。許可を得られる範囲で、可能な限り掲載しておくことをお勧めします。
「更新停止」は資金繰り悪化のシグナルと判定される
ホームページの「新着情報」「お知らせ」の最終更新日は、審査担当者が確実に確認するポイントです。
半年以上の放置が示すもの
新着情報の最終更新が1年以上前。これは、銀行員にとって「この会社は情報発信する余裕がなくなっている」という可能性を示唆します。
会社が順調に稼働していれば、何かしら発信すべき情報は生まれます。新商品の発売、新規取引の開始、採用の告知、展示会への出展、メディア掲載。これらが一切ないということは、「動きがない」か「動きを発信する余裕がない」かのどちらかです。
株式会社プラストの調査によれば、中小企業のホームページ更新頻度は「1か月に1回程度」が31.6%、「1週間に1回程度」が26.8%という結果が出ています。
更新頻度が高いに越したことはありませんが、最低でも半年に1回は何かしら更新することをお勧めします。それだけで、「この会社は動いている」という印象を与えられます。
採用情報が語る会社の状態
採用ページの取り扱いには注意が必要です。
「常時募集中」「通年採用」と書かれた採用ページが何年も放置されている。これは、「人が定着しない会社」「いつまでも採用が埋まらない会社」という印象を与えかねません。
採用が終了したら「募集終了」に更新する。再び採用を始めたら「募集開始」に更新する。この当たり前の作業ができているかどうかは、会社の管理体制を示すシグナルにもなります。
「生存証明」としてのブログ・新着情報
ブログや新着情報の更新は、「この会社は今も活動している」という生存証明になります。
内容は派手なものでなくて構いません。季節の挨拶、社内行事の報告、ちょっとした業界ニュースへのコメント。これらがあるだけで、「この会社は動いている」という印象が生まれます。
重要なのは「更新されている」という事実そのものです。内容の質より、更新の継続性の方が、審査においては意味を持ちます。
ホームページの不備が審査に与える影響とは?
ここまで整合性と更新性の重要性を述べてきましたが、実際のところ、ホームページの不備だけで融資が否決されることは稀です。
審査は総合判断です。決算内容、事業計画、担保の有無、代表者の経歴、取引実績。これらを総合的に判断して融資の可否が決まります。ホームページは、その判断材料の一つに過ぎません。
ただし、ホームページの不備は「追加確認が必要な状態」を生み出します。追加確認には時間がかかります。時間がかかれば、融資実行も遅れます。急ぎの資金需要がある場合、この遅れは致命的になりかねません。
また、複数の候補先から1社を選ぶような場面では、ホームページの整備状況が「最後の判断材料」になることもあります。決算内容や事業内容で甲乙つけがたい場合、「情報管理がしっかりしている方」を選ぶのは自然な判断です。
ホームページの整備は、審査を「有利に」するというより、「不利にしない」ための防御策と考えてください。
銀行員目線で見る「損するホームページ」と「得するホームページ」
ここで、銀行員目線で見た「損するホームページ」と「得するホームページ」を整理してみましょう。
損するホームページの特徴
- 登記簿と住所や代表者名が一致していない
- 事業内容が専門用語ばかりで何をしている会社かわからない
- 設備や業務の写真がなく、実態が見えない
- 新着情報が1年以上更新されていない
得するホームページの特徴
- 会社情報が登記内容と完全に一致している
- 誰が見ても事業内容が理解できる説明になっている
- 設備・現場・業務風景の写真が掲載されている
- 定期的に更新され「今も動いている会社」と伝わる
違いは、デザインではありません。「確認の手間が発生するかどうか」ただそれだけです。
「集客」を捨てて「信用」に振り切る運用もある
ホームページは集客ツールだ、という考え方が広まっています。しかし、すべての会社が集客のためにホームページを持つ必要はありません。
無理なキラキラ投稿は不要
毎週ブログを更新しなければならない、SNSと連携させなければならない、動画コンテンツを作らなければならない。このようなプレッシャーを感じている経営者は少なくありません。
しかし、既存顧客との取引が安定しており、新規開拓の必要性が低い会社であれば、集客目的のコンテンツ更新は必須ではありません。
金融機関との取引、取引先からの与信調査、採用候補者からの会社確認。これらの「調べられる場面」に対応できれば、ホームページの役割は十分に果たせています。
この観点で考えると、必要なのは「正確で最新の会社概要」「事業内容の明確な説明」「定期的な生存証明としての更新」の3点に絞られます。
自社でできないなら「保管」を外部に委ねる
ホームページの更新を社内で行えない。担当者がいない。やり方がわからない。時間がない。
これは多くの中小企業に共通する課題です。前記した株式会社プラストの調査では、ホームページを外注している理由として「担当者がいないため」が30.5%、「やり方が分からないため」が30.2%という結果が出ています。
自社で管理できないのであれば、外部に委ねるという選択肢があります。重要なのは、更新が止まらない仕組みを持つことです。
月に1回でも、四半期に1回でも、「決まったタイミングで確実に更新される」状態を作れれば、それだけで「放置されている」という印象は払拭できます。
まとめ:明日から確認すべき3つのポイント
ホームページは、デザインの良し悪しではなく、整合性と更新性で評価されます。
明日から確認していただきたいのは、以下の3点です。
1点目。会社概要に記載された住所・電話番号・代表者名が、登記簿謄本と一致しているか確認してください。1文字でも異なっていれば、即座に修正が必要です。
2点目。「新着情報」「お知らせ」の最終更新日を確認してください。半年以上前であれば、何か1件、更新を入れてください。内容は「年末年始休業のお知らせ」程度のもので構いません。
3点目。事業内容の説明が、業界外の人間にも理解できる言葉で書かれているか確認してください。御社の業界に詳しくない銀行員が読んでも、「何をやっている会社か」が分かる状態になっているかどうか。
この3点を確認・修正するだけで、ホームページは「信用を毀損しない状態」になります。融資審査や口座開設で「余計な質問を受けない」ための最低限の整備です。
放置すれば、本来不要だった確認作業が発生し、審査が長引く可能性があります。まずは今日、御社のホームページを開いて、会社概要ページを確認することから始めてください。
ホームページによる信用構築に関するよくある質問
ホームページがなくても法人口座は開設できますか?
ホームページがなくても法人口座の開設は可能です。ただし、事業実態を証明する他の資料(契約書、請求書、許認可証など)の提出を求められます。freeeの調査によれば、「特にホームページが用意されていない場合は審査に通りにくい」とされており、ホームページがあった方が審査はスムーズに進む傾向があります。
どの程度の頻度でホームページを更新すべきですか?
最低でも半年に1回の更新をお勧めします。中小企業のホームページ更新頻度は「1か月に1回程度」が最も多いという調査結果もありますが、信用維持の観点では、半年に1回の更新があれば「放置されている」という印象は避けられます。更新内容は、季節の挨拶や営業日のお知らせ程度で十分です。
バーチャルオフィスを使っている場合、審査に影響はありますか?
バーチャルオフィスの使用は、それだけで審査に落ちる理由にはなりません。ただし、登記上の住所と実際の業務場所が異なるため、「事業実態の確認が難しくなる」という点で、追加の確認作業が発生しやすくなります。バーチャルオフィスでも開設可能な金融機関を選ぶか、事業実態を示す他の資料を充実させることで対応できます。
創業したばかりで掲載できる実績がありません。どうすればよいですか?
創業間もない場合は、代表者の経歴、これまでの職務経験、事業計画などを掲載することで、「この人物なら事業を遂行できる」という信頼性を示すことができます。また、取得済みの許認可、加入している業界団体、所属する商工会議所なども、間接的な信用情報になります。
ホームページを見られていると感じる具体的な場面はありますか?
法人口座開設時、融資申込時、新規取引開始時(与信調査)、採用応募時などが典型的な場面です。いずれも、「この会社と取引しても大丈夫か」を判断するために、相手方がホームページを確認するタイミングです。特に金融機関は、犯罪収益移転防止法に基づく実態確認の一環として、ホームページを必ず確認します。
ホームページ診断について
ホームページが「銀行に見られても恥ずかしくない状態」になっているか、自分では判断しにくいという声をよく聞きます。
集客の話は一旦置いておき、まずは「守り」を固める。金融機関や取引先から調べられたときに、不要な疑問を持たれない状態を作る。これが、ホームページを「信用インフラ」として活用する第一歩です。
御社のホームページの現状診断について、お気軽にご相談ください。
参照・出典一覧
本記事の作成にあたり、以下の情報を参照しました。
- 犯罪収益移転防止法に関する留意事項について 発行元:金融庁|確認日:2026-01-31
- 事業内容確認書類について 発行元:GMOあおぞらネット銀行|確認日:2026-01-31
- 法人口座開設の方法まとめ!必要書類や金融機関の選び方を解説 発行元:freee株式会社|更新日:2024-08-29
- 法人口座開設にはホームページは必須?審査で見られるポイントも解説 発行元:フリーウェイジャパン|更新日:2024-06-21
- 「ホームページの重要性」に関する調査 発行元:株式会社プラスト(PR Times掲載)|確認日:2026-01-31
- 犯罪収益移転防止法に関するよくある質問・回答 発行元:一般社団法人全国銀行協会|確認日:2026-01-31
この記事を書いた人
嶺 利久
Webコンサルタント(グロースパートナー)
Webマーケティング歴15年。中小企業を中心に300社以上のWebサイト制作・マーケティング支援に従事しています。「ローカル企業をGROWTHする」をモットーに、地域企業のSEOやコンテンツマーケティング戦略を得意としています。Webを起点とした戦略支援とブランディングを通じ、顧客のビジネス成長に貢献しています。



