
ホームページは営業部長であり、人事部長であり、広報担当でもある。
日本政策金融公庫の調査によれば、デジタルツールを導入した中小企業のうち、ホームページ・SNSの導入率は88.5%と、会計システムや販売管理を上回って最多です。
ところが、この数字には裏があります。導入はしたものの、更新頻度が不定期にとどまる企業は約6割。ホームページを持っていながら、名刺に印刷されたURLとしてしか機能していない企業が大半を占めています。
問題は制作の質ではありません。ホームページを経営の仕組みのなかに組み込んでいないことが、成果につながらない構造的な原因です。
過去15年間で300社以上の現場を見てきた中で、成果を出す企業とそうでない企業の差は、デザインの良し悪しでも、SEOの巧みさでもありませんでした。経営判断とWebが連動しているかどうか。その一点に尽きます。
目次
ホームページ活用が止まった企業で起きていること
経営とWebが分断されている企業では、ホームページが費用項目のまま放置されています。
制作費だけが記憶に残る構造
多くの経営者にとって、ホームページは数年前に100万円かけて作ったもの、という記憶で止まっています。制作時には打ち合わせを重ね、写真撮影にも時間を割いた。しかし公開後、更新作業は担当者任せになり、やがて誰も内容を確認しなくなる。
前記した日本政策金融公庫の調査(2024年)によれば、デジタル化に取り組んでいる企業の5割超が期待以上・期待通りの成果が出ていると回答しています。裏を返せば、残りの半数近くは成果を感じていません。この差は、ホームページを事業の流れのなかに置いているか、流れの外に置いたままにしているかの違いから生まれています。
更新されないサイトが信頼を削る
ホームページの更新が止まったとき、最初に失われるのは新規の問い合わせではなく、既存の信頼です。取引先の担当者が御社のサイトを見たとき、最終更新が2年前であれば何を感じるか。この会社はまだ営業しているのだろうかという不安が生まれます。
小規模企業白書(中小企業庁)でも、ホームページの更新頻度について約6割が不定期と回答している一方、毎日から月1回の頻度で更新している企業も約3割を占めています。この3割の企業が、検索エンジンからの評価と顧客からの信頼を積み上げている側です。
Web経営連動の起点になる3つの役割
ホームページを経営インフラとして位置づけると、営業・採用・信頼構築の3領域が同時に動き始めます。
24時間稼働する営業担当として
大分のような地方都市で車社会が根づいた地域では、顧客が新しい取引先を探す行動の起点はスマートフォンでの検索です。
展示会や紹介に頼れる範囲には限界があります。ホームページに自社の強み、対応可能な業務範囲、施工事例や導入実績が具体的に掲載されていれば、営業担当者が不在の深夜でも、顧客は安心して問い合わせボタンを押せます。
採用力を支える人事部長として
建設業や介護福祉業で人材確保が難しい地域こそ、ホームページの採用ページが果たす役割は大きくなります。
求職者はハローワークの求人票を見た後、ほぼ確実に企業名で検索します。そのとき表示されるサイトが古いままであれば、応募の意欲は下がります。現場の写真、社員の声、働き方の具体的な情報を掲載するだけで、求職者が感じる安心感は大きく変わります。
信頼を可視化する広報担当として
地方の中小企業にとって、信頼は口コミだけで維持できるものではなくなりました。新しい取引先、金融機関、行政機関。相手が初めて御社を調べるとき、最初に確認するのがホームページです。
代表者の顔、事業への考え方、これまでの実績。こうした情報が整理されているサイトは、名刺交換の前にすでに信頼を積み上げています。
それぞれの役割で何を載せればよいかを整理すると、以下のようになります。
| 役割 | 掲載すべき情報 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 営業担当 | 対応業務の範囲、施工事例・導入実績、価格帯の目安 | 深夜・休日でも見込み客が自社を比較検討できる |
| 人事部長 | 現場の写真、社員の声、働き方・福利厚生の具体情報 | 求職者の不安を解消し、応募率が改善する |
| 広報担当 | 代表者の顔と考え方、事業沿革、取引実績 | 初対面の取引先・金融機関からの第一印象が変わる |
もちろん、この3つすべてを同時に完璧にする必要はありません。自社にとって最も切実な課題が営業なのか、採用なのか、信頼構築なのかを見定めて、そこから着手すれば十分です。
Web経営連動で成果が出ている企業の共通点
成果が出ている企業に共通しているのは、特別な技術力ではなく、経営者がWebの役割を理解したうえで意思決定に関与していることです。
経営会議でホームページの数字が話題に上がる
月次の問い合わせ件数、どのページが見られているか、どの検索語句で訪問があったか。こうした数字が経営会議の議題に含まれている企業は、自然とサイト改善のサイクルが回ります。Web担当者だけが管理画面を見ている状態では、改善の優先順位が経営の方向性と一致しません。
Google Analytics(GA4)を使っている場合、経営者が毎月確認すべき指標は3つに絞れます。
- セッション数はレポートの集客サマリーで確認できます。
- 問い合わせや資料請求の件数はイベントから目標として設定した項目で追えます。
- 検索クエリはGoogle Search Consoleの検索パフォーマンスで、どんな言葉で自社サイトが表示されたかを一覧で確認できます。
操作そのものは担当者に任せて構いません。経営者はこの3つの数字を月に一度確認するだけで、サイトが動いているかどうかを判断できます。
経営者自身がアクセス解析の細かい操作を覚える必要はありません。操作は担当者に任せて、結果だけを月に一度確認する。それだけでサイト改善の優先順位が経営の方向性と一致し始めます。
ある建設会社では、月次会議にホームページの問い合わせ件数を議題として加えたことが転機になりました。以前は制作会社に任せきりで、サイトの内容と営業方針がずれたままでした。議題に加えた後、経営者の判断で施工事例ページの内容を営業資料と統一したところ、問い合わせの質が変わり、受注に至る案件の割合が明らかに上がったといいます。
特別な投資をしたわけではなく、経営の視線がサイトに向いたことで、既存のページが成果を生む構造に変わった好例です。
事業計画にWeb施策が組み込まれている
新しいサービスを始めるとき、新しい市場を開拓するとき、採用を強化するとき。こうした経営判断のたびに、ホームページの更新計画が自然に含まれている企業は、Webが経営と連動している状態です。逆に、事業計画が固まった後にWeb担当者へページを作っておいてと指示が下りる構造は、連動とは呼べません。
こうして見ると、経営とWebが連動している企業には共通した姿勢があります。
- Webのアクセスデータが経営判断の材料として使われていること
- 事業計画とサイトの更新内容が一致していること
- そして更新の頻度よりも経営判断との一致を重視していること
この3点が揃っている企業は、特別な技術を持っていなくても成果が積み上がっていきます。
ホームページ放置が経営に与える3つの影響
ホームページを経営から切り離したまま放置すると、目に見えにくい形で事業が影響を受けます。
検索順位の下降による機会損失
Googleの検索エンジンは、定期的に更新されているサイトを評価する傾向があります。競合他社がコンテンツを追加し続けている間に自社のサイトが止まったままであれば、検索順位は緩やかに下がり、新しい顧客との接点が減っていきます。
加えて、検索結果にAIが生成した概要が表示される場面が増えており、AIが参照元として選ぶのは独自の情報を継続的に発信しているサイトです。更新が止まったサイトは、従来の検索順位だけでなく、AIによる引用・推薦の対象からも外れていきます。この変化は急激には起きないため、気づいたときには相当な差がついていることがあります。
採用応募の減少
求職者はスマートフォンで企業情報を確認します。サイトがスマートフォン対応していない、最新の施工実績が3年前のまま、社員紹介のページが存在しない。こうした状態の企業に対して、求職者は情報が古い会社という印象を持ちます。
求人広告に費用をかけても、受け皿となるサイトの品質が低ければ、費用対効果は悪化します。
取引先からの信頼低下
定期的な更新がないサイトに対して、取引先が不安を感じるという調査データもあります。営業しているか不安になる、情報が正しいか不安、という声は、直接伝えられることがないだけに、気づきにくい損失です。
この段階でうちはそこまで深刻ではないと感じたとしても、それは顧客の声が届いていないだけかもしれません。一度、自社のサイトを顧客の目線で開いてみてください。
ホームページと経営との連動を始めるための最初の一歩
大規模な投資は不要です。まず経営者自身が自社のホームページを月に一度見ることから始めてください。
現状把握から始める
自社のホームページを検索エンジンで検索してみてください。【地域名+業種】で検索したとき、自社がどの位置に表示されるか確認します。表示されない、あるいは2ページ目以降にしか出てこない場合は、新規の顧客から見つけてもらう機会を逃しています。
次に、自社サイトの最終更新日を確認します。トップページのお知らせ欄が1年以上前の日付であれば、訪問者はこの会社は活動しているのだろうかと感じる可能性があります。
経営の言葉でホームページを書き直す
多くの中小企業のホームページには、制作会社が書いた文章がそのまま残っています。「お客様のニーズに合わせた最適なソリューションをご提案します」といった抽象的な言葉は、経営者の考えを反映していません。
代わりに、経営者自身が普段の営業で話している言葉をそのまま使ってください。「大分市内の木造住宅のリフォームなら、見積もりから施工まで自社で一貫して対応できます」こうした具体的な一文のほうが、検索エンジンにも顧客にも伝わります。
月に一度の更新を経営の習慣にする
施工事例の追加、新しいサービスの告知、採用情報の更新。月に一度、経営判断と連動した情報をホームページに反映する習慣を作ることが、Webと経営をつなぐ最初の一歩です。
この作業自体は30分もあれば終わります。大切なのは更新の量ではなく、経営の動きとサイトの情報が一致している状態を保つことです。
それでもホームページに手が回らないという現実について
すべての経営者がWebに時間を割けるわけではありません。この懸念は、むしろ正常な経営感覚です。
本業に集中しなければならない以上、ホームページの更新に毎週何時間もかけることは現実的ではありません。ただし、更新を完全にゼロにすることと、月に一度だけでも経営の動きを反映することのあいだには、大きな差があります。
自社で対応が難しい場合は、地元のWeb制作会社や運用代行サービスに任せるという選択肢もあります。その場合でも、更新の方向性を決めるのは経営者自身です。何を伝えたいか、どんな顧客に来てほしいか。その判断を制作会社に丸投げした時点で、経営とWebの連動は切れてしまいます。
補助金や助成金を活用してホームページの改修を進める方法もあります。IT導入補助金や各自治体の支援制度を活用すれば、費用面の負担を軽減しながら専門家の力を借りることができます。
まとめ
ホームページは、費用をかけて作って終わりの制作物ではなく、経営の意思を24時間伝え続ける仕組みです。
経営とWebが連動している企業は、問い合わせの増加、採用力の向上、取引先からの信頼構築という3つの成果を同時に得ています。連動していない企業は、同じホームページを持っていても成果を感じられません。この差は、制作費の大小ではなく、経営者がWebを事業の一部として扱っているかどうかから生まれています。
明日から確認できることは3つあります。
- 自社の社名で検索して表示順位を確認すること
- ホームページの最終更新日を確認すること
- そして、次の経営会議でホームページの問い合わせ件数を議題に加えること。
この3つを確認するだけなら、30分で終わります。まずはそこから始めてみてください。
よくある質問と回答
ホームページの更新は自社で行うべきですか、外部に任せるべきですか?
どちらでも成果は出せます。判断の基準は、社内にWebの更新に30分を割ける人がいるかどうかです。いなければ外部に運用を任せつつ、更新内容の方向性だけは経営者が決める体制をとってください。方向性の決定まで外部に委ねると、経営との連動が途切れることがあります。
費用をかけてリニューアルしないと成果は出ませんか?
必ずしもリニューアルが必要とは限りません。既存のサイトでも、トップページの文言を見直す、施工事例を追加する、お問い合わせフォームの導線を改善するといった部分改修で効果が出るケースは多くあります。まずは現状のサイトで改善できる箇所がないか、確認するところから始めてください。
ホームページからの問い合わせはどれくらいで増え始めますか?
業種や地域にもよりますが、継続的な更新を始めてから3か月から6か月が一つの目安です。検索エンジンがサイトの変化を認識し、順位に反映されるまでに時間がかかるためです。すぐに成果を期待するよりも、月1回の更新を半年間続けることを目標にしてください。
大分のような地方でもホームページは必要ですか?
地方だからこそ必要です。都市部に比べて競合のWebサイトが少ない分、しっかりと情報を整備するだけで検索上位に表示されやすくなります。車社会で対面の営業範囲に限界がある地域ほど、ホームページが担う役割は大きくなります。
ホームページを経営の視点で見直したいとお考えであれば、まずは現状の課題を整理するところからお手伝いできます。30分の無料相談で、御社のサイトの改善ポイントを具体的にお伝えします。お気軽にお問い合わせください。
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参照・出典一覧
本記事の作成にあたり、以下の情報を参照しました。
- 「中小企業のデジタル化に関する調査」の結果を公表(日本公庫) 発行元:日本商工会議所(日本政策金融公庫調査)|確認日:2026-02-02
- 2024年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要 発行元:中小企業庁|確認日:2026-02-02
この記事を書いた人
嶺 利久
Webコンサルタント(グロースパートナー)
Web制作・マーケティング支援歴15年。大分県を拠点に、地方の中小企業300社以上のWeb戦略を支援。経営者の言葉をWebに翻訳し、問い合わせ・採用・信頼構築につなげる「経営連動型」のホームページ運用を提唱。地域の事業者が自走できる仕組みづくりを大切にしています。



